フットサル・プロジェクト

報告書 futsal Project

第2部.東京都フットサル連盟設立にあたって

3.「東京都フットサル連盟」のあり方
 
1)連盟の意義

 まず組織図上、上位にある協会、連盟の下位組織としての機能が挙げられる。それは、東京都サッカー協会の監理、統括を受ける機関であり、日本フットサル連盟の加盟団体としての権利や義務である。加盟団体から、いわゆる「登録料」を徴収し、それに見合った様々なサービス−全国大会予選の開催やトレセン活動、代表チームの編成や審判講習会の開催などといった協会ならではの事業−が提供されるのである。

 これに加えて、新たな組織化論を担う機能として、フットサルとの多様な関わりを認める「ゆるやかな組織化」のモデルとしての側面がある。そしてこれが、「底辺からの」組織化に伴って生まれる連盟の意義である。

<1>個々のクラブを育てる機能
 経済的に自立したクラブを育てるためのノウハウの蓄積・提供。委託事業の紹介や、管理経費の産み出し方の指導、あるいはクラブマネージャーの指導・派遣等も考えられる。

<2>クラブ間の利害を調整する機能
 すでに、「フットサル民間施設連絡協議会」が行われているように、民間施設間の利害の調整役として連盟の存在意義は大きい。トップレベルにあっては、クラブを超えた選手の所属に関する問題も起こり得るが、それらを調整する上位団体として連盟は必要である。

<3>クラブ連合としての機能
 フットサルに関わるイベント全てに適用される「フットサル保険」は、各クラブ単位よりも連盟といった大きな単位の方が作りやすいだろう。また、体育館などの公共施設の開放を呼びかけることも、個人よりもクラブ、クラブよりも連盟といった単位の方が適切である。「メトロポリタンテレビを利用してのフットサル番組」も、連盟単位なら可能である。 このように、クラブ連合としての連盟には、大きな可能性がある。

 
2)連盟の構成員−加盟団体はクラブ、会員は個人、大会参加はチーム単位で

 「一般に、"登録"はイベント参加権・資格獲得の意味が強く、日常的な組織所属の意味が弱い」注7)。そこでここではメンバーシップの観点から、クラブ単位で"加盟"し、個人単位で"加入"するといった表現を用いたい。言い換えると、「加盟団体はクラブ、会員は個人」ということである。

 連盟の加盟団体は、連盟が何を育てようとするのかに関わってくる。前述のように、競技団体が育てるべきは、年令・性別、レベルやニーズの異なる多様なメンバーによって構成される"クラブ"である。それを加盟の単位とすることによって、クラブを育てる視点が生まれるだろう。また、クラブの構成員である"個人"は、一人ひとりがクラブの一員であるという自覚を持つとともに、連盟の構成員であるとの自覚を促す意味でも、個人会員も位置づける必要がある。クラブに所属していない個人会員があってもよい。

 ゲームを行う単位である"チーム"は、競技会ごとに、そのレギュレーションに従って組織し、エントリーすれば良い。競技会出場を目的とするチームはクラブ内に常設されるだろうが、集うことが目的であったり、プレーそのものが目的だという場合、必ずしもチームが常設である必要はない。いずれにしてもそれらはクラブの問題、あるいは参加する個人の問題である。

 協会や連盟が把握し、育てるべきは"チーム"ではなく"クラブ"である。特に、全体の統括組織である"協会"への加盟団体は"クラブ"であるべきである。しかし"連盟"については、設立目的に添って加盟団体の単位を変えることも考慮されてよいだろう。すなわち、連盟が単に競技会の開催のみを目的とするものであれば、加盟単位は"チーム"でよい。しかしながら、幅広く、多様なニーズに応えるのであれば、加盟単位は"クラブ"であり、会員は"個人"である。

注7)日本体育協会『平成6〜8年度スポーツ人口実態調査報告書』

東京都フットサル連盟 登録制度 相関図(案)

 
3)組織化にあたっての課題

 さて、ここまでの考察を経て、具体的に「東京都フットサル連盟」の組織化を考えた場合、いくつか明らかにしなければならない課題がある。一つは「東京都」の範囲、次に「フットサル」の定義、特にサッカーとの関係、さらに「連盟」が対象とする範囲、すなわち、競技としてのフットサルを対象とするのか、それとも全ての愛好層を網羅するのかといった問題である。

 これらについて、本プロジェクトでも様々な意見が噴出し、現時点での統一見解はいまだ得られてはいない。今後も検討を続けるが、ここでは様々な意見を紹介するにとどめ、2001年度からの連盟発足へ向けての参考資料としていただきたい。

<1>「東京都」の範囲
 基本的には、本拠地が東京都にある「クラブ」を加盟団体とし、東京都に在住・在勤する「個人」を会員とするしかないだろう。しかし、ネット上のバーチャル・クラブや、埼玉都民、千葉都民の存在を考えると、地域性に関してはゆるやかなとらえ方をする必要があるのではないか。  なお、国籍については、日本サッカー協会傘下団体としての制約はあるが、ゆるやかに捉えたいと考える。

<2>「フットサル」の定義
 「広い意味でのフットボールの中にサッカーやラグビーがあり、さらにラグビーの中にユニオンとリーグがある。フットサルはフットボールの一形態であって、サッカーに従属するものではない」という考えや、「サッカーという概念はファイブアサイドでもイレブンアサイドでもない。その場で集まった奴をひーふーみーと数えて、今日は14人だから7対7、6人しかいないからGK抜きの3対3という風にやるものであり、それを競技として見るときはじめて、11人制とか5人制とかいう話になる」など、サッカーとフットサルの定義について様々な見解が示された。しかしながら、そもそもサッカーとは別組織で活動していたFIFSA(国際サロンフットボール連盟)をFIFAが統合したところにこの問題の発端があり、それは東京都の問題ではない。すなわち、FIFAがフットサルを統括する以上、組織的にはサッカーの中に入らざるを得ないだろう。

<3>「連盟」が対象とする範囲
 「競技としてのフットサルを対象とする」考え方と、ソサエチーや草フットサルなどレジャー的なものも含めて、「あらゆるフットサル愛好者を対象とする」考え方があり、本プロジェクト内での議論も平行線をたどっている。

 競技部門のみを対象とした連盟を支持する意見としては、「レジャーとしてやるなら、ルールも人数もその場で決めればいいと思うし、フットサルという名前を冠するべきではない。例えば最近7人制サッカーの大会も結構ふえている、あれはフットサルじゃないからといって面倒みないのか、というような問題が必ず出ると思う」などがある。本格的なフットサルに接してみたい者だけが連盟の構成員となり、「レジャースポーツとしてのフットサルは市場の原理にゆだねよう」という考え方である。

 あらゆる愛好者を対象とした連盟イメージは、「ゆるやかな組織化」がキーワードである。「愛好者を会員として獲得することや、競技者から引退した愛好者を継続的な会員として確保するためには、例えば、競技者加入と会員加入を区別し、競技者会員と一般会員を設けたり、会員加入を前提としてその中から選手権志向の会員が競技者登録をするシステムや、観戦会員や支援会員、ボランティア会員等の種別を設け、会員の多様化をはかることが求められる」注8)とするものである。また、フランスにおいて、競技志向の陸上競技連盟とは別に、自然の中を"自由に走る"レジャー志向の連盟(「スピリドン」)が組織されている注9)ように(表参照)、「多様なニーズを認め、ニーズごとに連盟が組織される」ようなイメージもある。

 大きな問題であるが、現時点で本プロジェクトとしての統一見解はない。

注8)日本体育協会『平成6〜8年度スポーツ人口実態調査報告書』
注9)早川武彦「近代スポーツから現代スポーツへの胎動」『スポーツは誰のために』,大修館書店,1995

表.既成の連盟と新しい組織の対比
連盟:陸上競技連盟
(近代スポーツ)
新しい組織:スピリドン
(現代スポーツ)
・トラックでの競争
・記録のために
・苦痛
・人工的環境
・明確な境界:競技場
・闘争的精神
・組織幹部の管理
・技術基準を有す
・語りでなく:解釈の余地のない客観化
・結果の感想の交流なし
・一定の競技時間
・路上を“自由に走る”
・自分のために
・楽しみ(苦痛もある)
・自然環境
・不鮮明な境界:自然の場
・平和的精神
・自主管理
・“自由なスタイル”
・行程の主体的読み取り可能
・感想交流あり
・3分の1から2分の1の競技時間
(出典:J.DEFRANCE,UN SCHISME SPORTIF ; CLIVAGES STRUCTURELS,
SCISSIONS ET OPPOSOTIONS DANS LES SPORTS ATHLETIQUES, 1960-1980 ;
In Actes de Recherche en Sciences Sociales 79, september 1989, p.88.)

<4>クラブが未成熟な現段階において
 地域に根ざしたクラブ育成を掲げるJリーグの誕生(1993)や文部省の総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業(1995)など、日本においてもようやくクラブを育てる機運が芽生えてきたが、まだまだ未成熟である。このような段階で、クラブの上位概念である協会・連盟を組織する際には、過渡的な措置も必要となろう。

 
おわりに

 本報告書では、現時点でわかっていることと、プロジェクト内で合意できたことを述べた。積み残した課題もあるので、今後も継続的に検討を重ねたい。

 本プロジェクトで意見が一致しているのは、大会参加資格だけの、登録費徴収のためだけのフットサル連盟であれば、それは「全く必要ない」ということである。20世紀における競技団体と同じ考え方では、いずれ破綻するだろう。前述のとおり、強権を発動して、施設・競技会・情報をすべて協会・連盟が握ることによって、協会・連盟が存続することは可能である。しかしそこには膨大な実務が残り、一方でサービスを待つだけの受け身の参加者を増やすだけで、文化としてのスポーツを育てることにはつながらないだろう。

 大きな可能性のあるフットサル。その組織化は、21世紀の日本スポーツの行方を占う、大きな決断であると考える。

サロン2002・フットサルプロジェクト1 コア・メンバー
川前真一(東京ベイフットサルクラブ)、杉村宏道(専修大学3年/F-NET)、中 塚義実(筑波大学附属高校)、野口良治(東京都サッカー協会)、山戸一純 (FUTSALNET)、澤井和彦(東京大学)、田尻美寧貴((株)クラブハウス)、横田祐 介(筑波大学修士2年:レジャー論)、豊田幸夫(フットボウズ・フットボール)
アドバイザリー・メンバー
秋田信也(東邦大学)、飯田義明(専修大学)、内田正人(B&D)、大塚秀樹 (日揮/FCRessaca)、笹原勉(日揮)、多田寛(東京ヴェルディ1969広報)、仲澤 眞(筑波大学)、中村淳(筑波大学3年/関東学連)、野田直広(富士電機)、浜村 真也(サポティスタ)、早川武彦(一橋大学)、広瀬一郎((株)スポーツナビゲー ション)、藤岡康(三菱総合研究所)、本多克己((株)クラブハウス)、四方健太 郎(立教大学3年)

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