フットサル・プロジェクト

報告書 futsal Project

第1部.首都圏におけるフットサルの現状

1."施設"の観点から
 
1)首都圏(東京都)におけるフットサル施設の現状

 日本におけるフットサル施設は公共施設と民間施設に大別できる。日本フットサル連盟が把握しているフットサル使用可能施設(公共・民間含む)は、全国に 122ケ所点在している(1998年度)。地域別に見ると、フットサル使用可能な施設が最も多いのは、関東27.9%、次いで東北25.4%、関西・東北が11.5%と続いている(表1.参照 1998年度5月時点)。
 最も大きい割合を占めた関東のフットサル施設事情は、東京都が20.6%(7施設)と最も多く、次いで茨城県、千葉県、神奈川県が17.6%(6施設)、山梨県が14.7%(5施設)となっている(表2.参照 1998年度5月時点)。

 また関東の都各県において、民間フットサル施設が必ず1つ存在していることも明らかになった。特筆すべきは、都各県における民間施設の占める割合が、8 割以上を示したことである。東京都も同様の傾向を示した。東京都内の施設数は1994年を皮切りに、年々増加し2000年には15施設が存在する状況となっている(表3.参照 2000年度)。

 
2)東京都内における民間フットサル施設の現状

 東京都におけるフットサルの歴史は、北区、府中市、八王子市などで「サロンフットボール」「ファイブアサイト」と呼ばれていた時代から盛んに行なわれてきた(フットサルの現状報告-事例報告4.東京都サッカー協会フットサル委員会の活動状況)。本来、フットサルは室内スポーツであり、先の地域におていも体育館での競技が主たる姿であった。しかしながら東京都に於いては、人工芝による屋外コートを所有する民間施設フットサル場が年々増加傾向を示している(表3参照)。民間フットサル施設増加を促す原因について「運営サイド」の視点より以下に述べていく。

●首都圏における民間フットサル施設増加についての一考察

 一つの事例として民間フットサル施設が建築されるまでの流れを以下に述べていく。まず当然の事ながらフットサル施設が存在するためには土地が必要である。そして土地を所有している人、いわゆるオーナー(個人・企業)が存在する。オーナーは「資産」としての「土地」を所有・保有することで地代にかかる税金を支払う。そこでオーナーは「ただむやみに税金を支払わずに、かつ儲かる方法は・・・」と考えるわけである。キーワードとなるのが「事業性(儲かる)」と「保有税金免除(その名の通り土地にかかる税金が免除される)」である。いわゆる「いかに収益を見込めるか」「どのように税金対策をはかるか」の二つの柱を軸に、オーナーは利用したい人へ土地を提供するか(運営会社への委託)、または自分で事業をおこすのである。

 例えばオーナーが所有する土地にビルが建設させれる計画が立つ。建設するのに5年間を要すると仮定する(契約、法律上の手続に関する問題を解決するのに必要な期間と仮定)。5年間、所有している土地を何もない砂地として保有することで、オーナーは税金を払い続けなければならない。そこで5年間という期間を「暫定利用期間」とし、その土地を有効に利用してもらう(もしくは有効に利用する術を自ら模索する)。そうすることで保有税金免除という恩恵をうけ、さらに事業性が高ければ高いほど収入も入ってくる。この場合、オーナーが自らフットサルという事業を行なう場合や、またフットサル運営業者に依託する場合などがある。どちらにせよ「税金を支払う」ということから、「収益を得る」「税金が免除される」という、まさに一石二鳥の産物を得るのである。

 では「なぜフットサルなのか」という疑問が浮上してくる。実際、スポーツというソフト以外にも、商業的ソフト、アミューズメントソフトなど数多くのソフトが存在する。その中からスポーツ中の、さらには「フットサル」というソフトを選択する理由として以下の理由が挙げられる。まず「先行投資に対する収支のバランス」が長けているという事実である。つまり事業を手掛けるオーナー、運営会社としては5年間という限られた期間で、少ない先行投資により、高い利益を求める。その意味でフットサルは格好のソフトである。なぜなら何もない砂地に対して、コートを敷き(2〜3面)、クラブハウスを建設することで一応「フットサル施設」とうい体裁が整う。さらに先行投資の額で言うならば、他のソフトと比較した場合、フットサルは先行投資の桁が一つ少ないのである。まさにオーナー、運営会社としては「安いコストで、高い利益」を目指すには最適である。

 次に5年後のビル建設時に「解体費」が少なくてすむことも要因の一つである。もともと砂地に、人口芝を敷くという作業行程を経て来たコートは、剥がすのも容易なのである。時間的、コスト的にこれほど解体作業が容易に行えるソフトも他にはないのである。

 さらに、将来的な市場が見込めることが挙げられる。1993年に開幕したJリーグの影響により、「サッカー界」のインフラ整備が格段に進歩したことはいうまでもない。プロスポーツとしての「サッカー」が果たした功績の一つは、「する」だけではなく、「みる」「支える」など、サッカー環境へ対する多様な変化を与えた。すなわち「する」人々の数が相対的に増加したと考えられる。さらにこれまでの「競技志向」のみに留まらず、「いつでも」「どこでも」「誰とでも」というレジャー志向、エンジョイ志向などの「する」層が飛躍的に拡大したことも要因の一つといえる。この「する」層の様々な欲求レベルに応じて、高い適応性をもたらすスポーツこそ「フットサル」なのである。

 また、「民間テニス施設の停滞・衰退」も一つの要因として論じられる。テニス人口の減少に伴い、収益が見込めなくなった施設が、ビルや駐車場、そしてフットサル場へ転用するという現象が各地で見られる。テニス場からフットサル場への転用理由の一つは、コートの大きさが類似していることが挙げられる。つまり先行投資及び解体費用の両面から、転用に際しての費用が他のソフトに比べローコストなのである。民間フットサル場増加の一つの要因として「テニス場からフットサル場への転用」が挙げられる由縁である。
 この様に、首都圏、特に東京都において「オーナー、運営会社の利害の一致」、さらには「市場の様々な欲求レベルに適応しやすいフットサルの特性による需要拡大」、「テニスからフットサルへの転用」などが起因となり、民間フットサル施設が増加したと考えられる。

 
3)東京ベイフットサルクラブの現状

 東京都の民間フットサル施設の中でも、1999年11月にオープンした東京ベイフットサルクラブを事例とし、民間フットサル施設の現状と課題、展望を報告する。コートレンタル状況は、平日は18時以降が主体で昼間の利用は少ない。また土日祝は朝から夜まで大会やレンタルコートなどでにぎわっている。施設概要については、フットサルコート4面、ナイター照明つき、無料駐車場50台完備。ロッカー・シャワー・更衣室完備。複合施設としてテニスコート、洗車場、羽田空港の駐車場(イエローパーキング)を併設している

 提供としているサービス内容は、各種大会(ビギナー、スーパービギナー、オーバー30、ミッドナイトセブンズ、サンライズ、MIX)を中心に、3ヵ月を1 クールとしたリーグ戦や、平日夜間に個人で参加する個人参加フットサルを行なっている。コート予約は、電話が約9割と最も多い。各種大会への申し込みは、メール約4割、電話約4割、窓口約2割である。フットサルは、年齢、競技レベル、志向など多種多彩な人々がプレーしているため、各々のセグメントに適したサービス提供が必要である。

−東京ベイフットサルクラブ施設概要−

所在地)
東京都大田区羽田旭町10-1
ハード面)
■フットサルコート4面設備・ナイター照明完備/更衣室/無料駐車場50台完備
  (テニス場、洗車場、有料駐車場施設も隣接)
ソフト面)
■利用料金 チーム登録料(1年間有効):¥10.000
表4.コート利用料金(料金は消費税別)
曜日/時間 一般登録チーム 未登録チーム
平日 10:00〜18:00 ¥ 8.000 ¥10.000
平日 18:00〜23:00 ¥10.000 ¥12.000
土日祝 9:00〜23:00 ¥12.000 ¥12.000
■サービス:コート貸し出し/大会(※表5参照)
月曜日 初心者を対象とした個人参加タイム
火曜日 個人参加タイム
水曜日 リーグ戦
木曜日 個人参加タイム
金曜日 リーグ戦
土曜日・日曜日・祝日 大会(表5参照)
表5.大会内容
大会名 大会内容 料金(消費税別/円)
スーパービギナーズ大会 サッカー、フットサル初心者対象 登録16.000 未登 録18.000
ビギナーズ対象 フットサル初心者対象 登録16.000 未登録18.000
ミックス大会 男女混合 登録16.000 未登録18.000
サンライズフットサル 日曜日 早朝大会 登録 6.000 未登録8.000
ミッドナイトセブンス 土曜日 夜7人制サッカー 登録15.000 未登録18.000
オーバー30 平均年齢30歳以上 登録16.000 未登録18.000
月例トーナメント オープン参加 登録16.000 未登録18.000
BAYリーグ 登録チームによるリーグ戦 一括払い50.000
7回払い 8.000
 
4)課題

■競技志向とエンジョイ志向に対するアプローチの模索
 東京ベイフットサルクラブに関しては、フットサルプレーヤー層が、競技レベルを目指すプレーヤーと、レジャーの一つとして捉えているエンジョイレベルに大別できる。今後競技レベル、年齢、志向などにより、多種多様なプレーヤー層の出現が予想される。それに伴い、プレーヤーの求めるニーズは一元的ではなく、より複雑なものになるであろうと考えられる。プレーヤーの、ニーズ・ウォンツを見極め、顧客満足を高めるサービスの提供が今後の重要課題である。

■需要と供給のバランス
 東京都における需要(フットサル人口)と供給(民間施設数)のバランス崩壊時への対応が重要課題である。今後、「現在最も価値の高いソフト=フットサル」という思惑から民間施設増加が予測される。さらに公共施設が解放され、使用可能な「フットサル場」の増加が予測される。結果的に「市場の食いつぶし」「価格破壊」「公共施設への市場流出」などの事態が予測される。そして施設の過剰な飽和状態が形成され、民間施設の存続が危ぶまれる状況が生じる可能性がある。

■協会・連盟、各施設との共存共栄
 東京都においては、民間主導であり各施設オリジナルのサービス提供により顧客であるプレーヤーの要求に応えている(完璧とはいえないが・・)。半面、単一施設によるサービスの色彩が強く、施設間の協力関係において柔軟であるとはいい難い。

■審判のレベル向上
 スポーツというサービスを提供している側にとって、コントロール不可能な要因は「勝敗」である。つまり「勝敗」を提供する過程で、審判の役割が重要になってくる。つまり審判も一つのサービス財である。より質の高いサービスを提供するうえで審判の育成も必要である。

■モラル・マナーの向上
 プレーヤーの試合・練習以外での良識・常識ある行動が求められる。スポーツ同様、社会のルールを守るという意識を協同して高めていきたい。

 
5)展望

■施設間・連盟の共存共栄
 首都圏、特に東京都においては、少なからず「暫定利用民間施設」が存在する。つまりオーナー、運営会社などの運営サイドの「利用勝手が良いソフト」として、さらに市場が求めるスポーツとして「フットサル」は「今が旬」なのである。よって全ての施設が半永久的に存続するとは考えられない。また今後「より便利なソフト(儲かる事業)」が現れないとは限らない。昨今日本で見られる企業スポーツの撤退、横浜フリューゲルス問題といった、「企業依存型スポーツ」から「地域に根ざした自立型スポーツ」としてフットサルは歩むことが望まれる。その他にも公共施設の解放、民間施設の増加に伴い「価格破壊」が生じ、民間施設が消滅することも十分考えられる。施設サイドは、遅かれ早かれこの様な状況下へ対応すべく解決策を見い出すことは「危機管理対策」として視野に入れておくべき項目であろう。

 また最も重要なことは、先の状況下(民間施設消滅)においてフットサル環境を取り囲む「する・みる・支える人々」さえも消滅させることである。この様な流れは断じてあってはならない。「場の消滅」はスポーツの衰退を促進させる一つの要因である。フットサルが「いつでも」「だれでも」「どこでも」というキャッチフレーズを唱えている以上、場の「提供」と「確保」は絶対必要条件である。それこそがフットサル振興につながり、また強化という側面を補うものと考える。

 以上のことから、フットサル連盟に託される役割が見えてくる。まず市場拡大に伴う利害関係調整役(サッカーでいうところのボランチ:舵取り 決して監督・オーナーではない)である。つまり連盟は、民間施設同士の利益関係を超越した中立的立場より、民間施設同士の関係を良好な方向へ導き出すことが可能性を持っている。しかし、「連盟」そのものが絶対的、圧力的、序列的立場から発言力を持つことは好ましくない。連盟は「市場原理」の中で、「最小にして、最大の中立的な力」を発揮する存在として輝きを保ち続けてほしいものである。

 さらにスポーツ利益主義の企業理論にとらわれず、スポーツの、フットサルの価値を見い出し、世論に、企業に、地域にフットサルの重要性・必要性を唱える存在として「連盟」が必要であろう。スポーツの、フットサルの社会的地位向上を目指し、フットサル環境のインフラを行なうことで、例え「する場」が消滅しても、フットサルを続けられる環境の提供、さらには情報提供が可能であろう。また、民間施設が増加傾向にある首都圏及び東京都では、各施設間による情報交換や、人的(審判)、物的(施設間の大会による会場提供)交換を行なうことで、単一施設の枠を越えたサービスの提供を図る上でも、潤滑油的存在としての「連盟」の必要性も見えてくる。

■定期的な審判講習会
 「民間施設サービス財」の色彩が多様であることは、顧客獲得におけるサービスの差別化から生じる当然の流れであろう。民間施設においては「審判」さえもサービスの一つとして捉えられる。プレーヤーが顧客である以上、「指導」ではなく「会話」が求められるのである。連盟傘下の大会で見られる「厳格なジャッジ」に加えて、「対話」「相互理解」が民間施設では必要なのである。これは特に、まだルールを把握できていない、エンジョイ層、レジャー層に対しては有効である。しかし、「競技レベル」では、「勝敗」が全てであり、やはり中立的立場から厳格なジャッジが必要なのである。

 この様に、多種多様な市場レベルに適応した「審判」の育成は急務である。また「スポーツ」というサービス財を提供している民間施設において、「施設間の審判レベル」に温度差があることは、顧客の離脱に留まらず、フットサル人口の減少・離脱、さらにはスポーツ拒否反応さえ起こしうる可能性を秘めている。「審判の育成・レベル向上」は、民間施設において重要なサービス財であり、フットサル普及・振興を促進するうえでも重要な課題である。よって各施設で定期的な審判講習会を行なうことで審判の質の向上をめざし、またフットサルへの理解度を深め、その波及効果として市場における共通語として「フットサル」が拡がりを見せることが望まれる。

 

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